遺産相続の税金や経費ってどのくらいかかるの?

親や配偶者、兄弟といった親類が亡くなった時にトラブルになりやすいのが不動産の遺産相続についてです。
こちらの記事では不動産を相続する際のチェックポイントや必要書類、税金や分配方法についてくわしくご紹介。
特に不動産を等分に分けるということが難しいため、事前に情報を仕入れて準備をしておくことが必須です。

遺産相続する時のチェックポイント

こちらでは不動産を相続する際のチェックポイントについて、不動産の種類ごとにご紹介していきます。
まずは不動産相続に進むまでの流れを見ていきましょう。

1.相続人を確定する(誰が・何人いるのか)
2.遺言書の有無・内容の確認
3.遺産の種類・総額を確認
4.遺産分割協議により誰が何をどれだけ相続するか決める

続いて、不動産の種類(土地・戸建て・マンション)ごとの相続に関するチェックポイントを解説します。

土地のみを相続する場合のチェックポイント

土地のみを相続する場合は、以下のような項目がポイントになります。

土地の地番が分かるか

●現在の所有者を確認
●抵当権が残っていないか
●固定資産税額を確認
●土地の管理が可能か

戸建て物件を相続する場合のチェックポイント

戸建て物件を相続する際は、次のような点に注意して手続きを進めると良いでしょう。

●土地・建物の名義の確認
●抵当権が残っていないか
●固定資産評価額を確認
●建物の老朽具合

マンション相続する場合のチェックポイント

マンションを相続する際は「相続後にどうするか?」まで決めるとスムーズに手続きができます。

●敷地権と建物で資産価値をチェック
●居住・賃貸・売却を決定
●小規模宅地等の特例に当てはまるか確認
●購入した金額や取得日が分かる書類があるか

不動産の分割相続する場合のチェックポイント

所有していた不動産が一つしかない場合や、相続人の数が多い場合、一つの不動産に対して複数の相続人が所有することになります。
その際に手続きをスムーズにするためのチェックポイントがあります。

●土地を文筆できるか
●相続人がそこに住んでいるか
●相続人全員の同意が得られるか

土地が広く文筆できる場合は、分割して相続できます。

もし被相続人と同居する家族がいて、今後もその不動産に住む予定がある場合はその相続人が土地・建物を相続し、他の相続人に代償分割することになります。

不動産相続に必要な手続き・書類

それでは実際に不動産を相続した際の手続きや必要書類などをご説明していきます。

不動産相続の手続きには締め切りや期限はありませんが、相続税の申告や相続放棄する際には期限があります。
必ず期限内に手続きを済ませるようにしましょう。

不動産とは?

そもそも不動産とはどんな財産のことを言うのかご存知ですか?
なんとなく動かすことができない財産ということは分かりそうですが、民法によって明確に規定があります。

民法によると不動産は「土地および土地に定着している建物や石垣、橋など」を指します。
権利の変更などに関しても取り扱いが異なり、動産は「引き渡し」ですが不動産は「登記」といいます。

「建物」に関しても規定があり、登記法によると屋根・壁・柱を備えていると独立した不動産とみなされます。

手続き

不動産を誰がどれだけ相続するか決まったら、相続登記の手続き(名義変更)に進みます。
相続登記の手続きは次のような流れで進めます。

1. 申請に必要な書類を準備
2. 金融機関を通じて登録免許税を納付
3. 登記申請書に納付した領収書を添付
4. 不動産の住所地を管轄する法務局へ申請書と添付書類を提出
5. 申請が受理されると2週間前後で権利書が発行される

権利書が発行された時点で相続登記の手続きは完了です。
登記の申請は自分達だけですることもできますが、プロである司法書士などに依頼するとスムーズに進むでしょう。

必要な書類

相続登記の手続きに必要な書類は以下の通りです。

◆相続登記申請書
◆固定資産評価証明書
◆遺言書(あれば)
◆遺産分割協議書
◆被相続人の戸籍謄本(除票)
◆被相続人の住民票(除票)
◆相続人の戸籍謄本(全員分)
◆相続人の住民票(全員分)
◆相続人の印鑑証明(全員分)

相続した不動産、どうすればいいの?

実際に土地や建物を相続した場合、どのように利用・活用したらいいのか迷うこともあるでしょう。
どうしたらいいのか分からないからと放置するということは絶対避けた方がいいでしょう。
不動産を相続したらなるべく早めに決めることをおすすめします。

1.活用

土地や建物を賃貸に出したりして活用するという方法があります。

状態の良い一戸建てやマンションならすぐに借り手が見つかる可能性がありますが、そのままでは貸せないような状態なら、草木を撤去したり建物をリフォームしたりして手直しが必要になります。

土地だけの場合は次のような活用方法があります。

●借地権を設定して貸し出す
●太陽光発電を設置して売電する
●駐車場(月極め・コインパーキング)にする
●資材置き場として建設業者にレンタル
●コンテナを設置してトランクルームにする
●集合住宅を建てて賃貸経営

2.家族や親族で利用

思い入れのある土地や自分が育った家を手放したくないという場合は、家族や親族に有効活用してもらうという方法があります。

特に田や畑といった農地は簡単に他人に売却したり用途変更ができません。
もし身近に農業をしている人がいれば、その人に農地のまま利用してもらうというのがベストでしょう。

3.売却

親が住んでいた不動産を相続したが今後も誰も住む予定がなく管理が難しいという場合は、思い切って売却した方が遺産の分配が楽になる場合があります。

老朽化した家が建っている土地よりも更地の方が高く売れる可能性があります。
値段が付かないような建物は思い切って取り壊してしまった方が売れやすくなるでしょう。

不動産は等分することが難しいため、売却して現金に替えることで不公平感が生まれずに分けることができ、無駄な争いが避けられるのです。

土地相続でかかる税金・費用

土地を相続した際に気になるのが、相続税や手続きの費用がどの位になるかです。
こちらでは相続税の計算方法やその他の費用についてご説明していきます。

土地の評価額について

相続税を計算する上で必ず必要になるのが土地の評価額です。

相続財産の価値を算定する場合、土地の価値は実際に売買される価格(時価)よりも安く評価されることになります。
というのも相続税額を出す上で、土地の評価は「相続税路線価」や「固定資産税評価額」に基づいて計算され、これらは時価の70~80%が目安となるためです。

その他にも土地の評価額は、次のような項目により差額が補正されます。

●エリア
●用途地域
●地目(田・畑・宅地)
●面積
●接道状況
●土地の形・崖の有無
●土地の奥行・長さ

自分でもできる相続税の計算方法

土地の評価額が分かったところで実際に納める相続税を計算してみましょう。

相続税は財産の総額によって税率が変動します。
税率は取得金額1000万円以下の10%から6億円以上の55%までです。

詳しくは国税庁の相続税の税率を参考にしましょう。
(国税庁サイト:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm

相続税は相続する現金や不動産の時価評価額から基礎控除分を差し引き、民法で定めている「法定相続分」で割ったものに、金額に応じた税率をかけて算出します。
(国税庁サイト:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4132.htm

相続税の金額=(時価評価額-基礎控除額)÷法定相続分×税率(10~55%)

上記の納税額は相続人一人当たりの金額となりますので、全体の相続税額を出すにはすべての相続人ごとに計算した金額を合計してください。
時価評価額は、不動産の種類に応じて算出方法が異なります。

◇土地…1㎡あたりの路線価×土地の面積(㎡)
◇戸建て住宅…土地の相続評価額+建物の固定資産評価額
◇マンション…土地の相続評価額+建物の固定資産評価額(専有部分+共有部分の持ち分)

マンションの場合も戸建て住宅と同様に土地と建物で分けて金額を出しそれぞれを合計します。
ただし建物の評価額は居室に該当する専有部分だけでなく共有部分の持ち分も含めた金額となります。

相続税以外の費用

相続税では税額が控除されたり減額したりできる特例措置があります。

基礎控除

財産の合計額が基礎控除額の範囲内であれば相続税がかかりません。
これは「相続税の基礎控除」といい、次のような計算式で算出できます。

基礎控除額=3000万円+600万円×相続人の人数

相続人が3人いるとすると3000万円+600万円×3人で4800万円、つまり相続財産の合計が4800万円以内であれば相続税がかからないことになります。

小規模宅地等の特例

生計を共にしていた親族からの相続で、事業用宅地や住居用宅地に該当する土地を譲り受けた場合、一定の割合で相続税が減額されます。

宅地の種類減額割合上限面積(㎡)
特定事業用宅地-80%400
特定同族会社事業用宅地-80%400
貸付事業用宅地-50%200
特定居住用宅地-80%330

詳しくは国税庁のHPを参考にして下さい。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm

相続に関する税務対策

相続税の基礎控除や小規模宅地等の特例以外にも相続税額を抑える制度があります。
適用される対象者はそれぞれ異なりますので、自分のケースに当てはまるかチェックしてみましょう。

控除の種類対象者内容
配偶者控除法定配偶者法定相続分相当額か1億6000万円まで控除
未成年控除20歳未満の相続人(20-相続開始年齢)×10万円を控除
障害者控除85歳未満で障害のある相続人(85-相続開始年齢)×10万円を控除
贈与税額控除相続開始3年以内に贈与税を納めた人相続額-贈与税額を控除
相次相続控除10年以内に2回の相続があった人1回目の税額の一部を控除

複数で遺産を相続する場合

複数の相続人で土地を相続する場合の分け方や注意点について見ていきましょう。

遺産相続の土地の分け方

遺産相続で土地がある場合の分け方には、現物分割・代償分割・換価分割・共有の4通りの方法があります。
それぞれの詳細や注意点についてご紹介していきます。

・現物分割

現物分割とは相続した財産の現物をそのまま相続人に分けるという方法になります。
たとえば妻と子供二人が相続人の場合に「妻は土地と建物、子供①は預貯金、子供②は車や株式」といった具合に分ける方法です。

また広い土地であれば文筆して相続人に分けるという方法もあります。
ただしこの場合、相続する財産の種類が複数あることが条件となり、全員が同額ずつ分けるということが難しいというのがデメリットです。

・代償分割

代償分割とは、相続人の一人が土地を相続し、他の相続人には相当分の金銭を支払うという分割方法になります。
相続人が住んでいるといったどうしても手放したくない事情がある際や、不動産以外に財産がない場合に採られる方法です。

評価の方法に関してトラブルになりやすく、不動産を相続する人が現金を準備できないと分割できないという注意点があります。

・換価分割

換価分割というのは、不動産を売却して得た現金を相続人で分けるというものです。
一番分かりやすく公平に分けられますが、事前に不動産の査定を受けたり売却先を探すといった手間がかかります。

また売却に関して不動産手数料がかかったり譲渡所得税が課税されるなど、財産が目減りしてしまうというデメリットがあります。

・共有

複数の相続人が共同名義になって相続することもできます。
一見するととても良い方法のように思われますが、後に売却したくなった際には相続人全員の合意が必要になるなど争いの種になりやすく、トラブルに発展しやすい方法です。

共有は上の3つの方法での分割が難しい場合の最後の手段と考えた方が良いでしょう。

複数で土地を相続する場合の注意点

複数人で土地を相続した場合、次のような懸案事項が発生する可能性があります。

●それほど広くない土地を複数人で文筆すると、使用用途が限られてしまい売却しにくい
●周辺環境や道路事情などで将来の資産価値に差が出てしまう
●相続人が死亡した場合や、何十年も共有のままにしておくと、共同名義人がだれか分からなくなったり、共同名義人の数がむやみに増えてしまったりする

まとめ

複数の相続人で不動産を相続する際には4つの方法によって分割でき、それぞれにメリットデメリットが異なります。
また不動産の種類によって相続の際のポイントや評価方法が異なりますのでご注意ください。

相続税を納める際には適用になる特例措置や自分に当てはまる控除を見つけるのがポイントです。
いざという時に混乱しないよう、前もってできる準備をしておくのが相続をスムーズに進めるコツになります。

この記事を書いた人

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深田(事務担当)